いわゆる「共謀罪」について

2017年6月に可決された「テロ等準備罪」いわゆる共謀罪について、テロ対策の視点から。

攻防「テロ等準備罪」新設法案|NHK NEWS WEB

 


『都内在住のAさんは、海外に拠点を置く過激派組織の考えに共感し、SNSを介して連絡を取り合うようになった。ある日、その組織がAさんと共に、テロ計画を共謀し、繁華街に車で突入、さらにナイフで、民間人の殺傷を行おうと試みた。』
 


……あくまで、仮定の話。
 
現行の刑法では、殺人罪などの重大犯罪は、既遂・未遂・予備罪まで処罰できる。
 
予備罪というのは、犯罪の実行に実質的に役立つ準備行為が必要とされるので、この事例においては、「ナイフの購入」、「レンタカーの手配」などが該当すると思われる。
 
とすると、もし、自宅にあるナイフ、車を持ち出して、どこか外出するという名目で、現場に向かった場合は……? 
 
仮に、事前に警察がそれを把握した場合でも、逮捕は可能?
 
テロ犯の取り締まりというのは、どのタイミングで、犯行を止められるかが致命的に重要であり、かつ難しい点である。
 
計画・共謀など、早い段階で対処できれば望ましいものの、そうなると、濫用の危険もある。また、過激派組織、過激思想を法的に定義するのも難しさがつきまとう。
  
その一方で、テロを未然に防ぐというのは、国を問わず政府に課された責任であり、それを怠ることは許されない。
 
日本に限らず、どこの国も手探りをしながら、あがいている現状がある。
 
国会での議論はやや拙速、議論が深まらなかった部分もあっただろう。

その責任は与野党双方にあった。

 

重要なのは法案が可決されてからであり、常にその有効性を精査し、その上で、思想・良心の自由にも配慮しつつ、そのギャップを埋めていく最善の方策をとるべきだろう。

 

更なる議論を有する。 

「テロリズム」をめぐって

ここのところ世界各地で痛ましいテロ事件が続いている。

ここでは、そもそも論として、法的な用語としての「テロ」とは何かをまず確認したい。

2001年の9.11以降、特に国際社会を揺るがすようになったテロ行為であるが、その定義については、国連などでずっと議論されてきたにも関わらず、明確に定めることができていない。

そもそも、テロリズムという言葉の語源が、 「恐怖 (=terror)」 であるように、一定程度の心理的なものであり、かつ主観性を帯びていることと関連している。


そうなると、厳格な法的定義が極めて難しい。

しかし、国際条約、各国の刑法において、ある程度その定義は固まりつつあるのも事実である。ざっくり言うと、
 

① 国家に属さない個人、集団によるもの
② 殺人、爆破などの破壊行為を伴う 
③ 政治性、宗教性を帯びている。
  

この3つが特徴として挙げられる。そして、テロ対策法を持つ国の多くは、これらを基にしている。

例えば、イギリスの2000年テロ対策法 (The Terrorism Act 2000)
では、

『人に対する深刻な暴力を伴うこと』

『活動を行った者以外の人の生命を危険にさらすこと』
  
さらに、

 

『当該行使あるいは脅威が,政治的・宗教的あるいはイデオロギー的な帰結を助長させると いう目的のためなされている場合。』
  

と、

「政治的」「宗教的」「イデオロギー的」という言葉が並ぶ。

ちなみに、このような包括的テロ対策法を先駆けて制定したのが、ほかならぬイギリスである。

北アイルランドのIRAを含め長きに渡って、テロと対峙してきたイギリスにはその蓄積も多い。

アメリカも含め、多くの国のテロ対策法はイギリスをモデルにしている。

テロを取り締まる枠組みは、国内法、国際法、かなり発展してきているものの、課題も多い。

 

具体的課題等については、次の機会に。

EU離脱交渉の現状

現在、イギリスのEU離脱交渉は、第2ラウンドに入っている。

その模様については、ブログでも随時取り上げていくつもりだが、まず昨年末の第1ラウンドの決着についておさらい。


第1ラウンドにおいては、3つ課題が議論された。

 

① 離脱金

② ECJの司法管轄権をいつまで認めるか

③ アイルランド問題



①の離脱金は、およそ400億ポンドと、当初の予定から倍増させ、

②のECJの司法管轄は、EU離脱後の移行期間も認めるという形で決着した。

全体的に、イギリス側がかなり譲歩した形である。


そして、最後の最後まで、難航したのは、③のアイルランド問題。

この問題に関して、イギリス、DUP,EU、アイルランドの4者で、ぎりぎりまで話し合いが行われ、


イギリス、アイルランド間の国境については、

 

「EU規制を継続する(regulatory alignment)」 

 

という曖昧な文言でかろうじて合意した。


しかし、この第1ラウンドの合意そのものが、かなり不安定な部分が多く、

 

現在において、既に行き詰まりを見せつつある。

これからの課題は、

移行期間 (transition period) の設定、と通商交渉。

いよいよ大人しくしていた、保守党の強硬派もいよいよ声をあげてくる。


離脱交渉は、むしろこれからが本番である。

 

3月末の決着へ向けた議論が本格化していくだろう。

国際法ブログとして

国際法といえば、見ようによっては堅そうな、一方で掴みどころのない印象を持つ人もいるだろう。

とはいえ、実際のところ国際法は様々な分野を越えて、あちこちに行き渡っている。

最近のニュースなんかでいえば、

カタルーニャの独立問題。「国家承認、民族自決

 


ノーベル平和賞を受賞した核兵器禁止条約は、「条約法、武力紛争法」



それに、「イスラム国」はもちろんそう 「武力紛争法」 だし、


EU離脱後のイギリスの貿易関係は、 「国際経済法」


南シナ海をめぐる問題 は、「海洋法」


トランプ政権の離脱に揺れた、パリ協定なんかは、「国際環境法」である。


こんな感じで、あらゆる世界的なニュースは、国際法の重要な論点を提示している。

が、今一つ表には出ていない。

国際法に興味はあるけど、どうもとっつきにくい…」

というイメージがあるようではと。

というわけで、このブログでは折に触れて、個々の事例を踏まえて、国際法とは何ぞや、ということを考えたいと。

このブログは、基本的に色々なテーマを扱うので、

国際法関連のものは、そう頻度は多くないかもしれないけれど、

 

大きなニュースが起きた場合などに、できればと思います。

フランスと徴兵制

フランスで徴兵制を復活させるという動き。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180120/k10011295281000.html

テロの脅威への対抗が主たる目的だという。

このことについては、驚きの声も多い。

 

「リベラル」なマクロンが、ということで意外なところもあるかもしれないが、彼は大統領選のときから訴えていた公約の一つ。

 

f:id:climbershigh:20180216002704j:plain

independence.barcelonas.com/2017/05/08/emmanuel-macron-elected-president-of-france-what-does-this-mean-for-france-europe-and-the-world/


そもそも、テロリズムは、フランスが営々と積み上げてきた


「リベラルな社会」を根底から覆すのが目的なのだから、


それを守るために、国民が全力を挙げて立ち上がるべきというのが、彼の主張であろう。

効果は別としても、

「軍事力ではテロに対抗できない!」とか、

「話し合いが必要!」みたいな立場に人からすれば、現実を突きつけられた感のある措置だろう。

ただ、正直に言って、フランス、ヨーロッパが置かれている状況はもうそんな悠長な状況ではない。


一時より落ち着いているとはいえ、

いまだ「戦争状態 (オランド前フランス大統領の発言)」にある。

よって、マクロンの「積極的」なテロ対策の動きは、今後もヨーロッパ全域に続いていくだろう。


今後の動きが注目される。

プライバシーポリシー

個人情報の利用目的
当ブログでは、メールでのお問い合わせ、メールマガジンへの登録などの際に、名前(ハンドルネーム)、メールアドレス等の個人情報をご登録いただく場合がございます。これらの個人情報は質問に対する回答や必要な情報を電子メールなどをでご連絡する場合に利用させていただくものであり、個人情報をご提供いただく際の目的以外では利用いたしません。

個人情報の第三者への開示
当サイトでは、個人情報は適切に管理し、以下に該当する場合を除いて第三者に開示することはありません。
・本人のご了解がある場合
・法令等への協力のため、開示が必要となる場合

個人情報の開示、訂正、追加、削除、利用停止
ご本人からの個人データの開示、訂正、追加、削除、利用停止のご希望の場合には、ご本人であることを確認させていただいた上、速やかに対応させていただきます。

アクセス解析ツールについて
当サイトでは、Googleによるアクセス解析ツール「Googleアナリティクス」を利用しています。このGoogleアナリティクスはトラフィックデータの収集のためにCookieを使用しています。このトラフィックデータは匿名で収集されており、個人を特定するものではありません。この機能はCookieを無効にすることで収集を拒否することが出来ますので、お使いのブラウザの設定をご確認ください。この規約に関して、詳しくはここをクリックしてください。

広告の配信について
当サイトは第三者配信の広告サービス「Google Adsense グーグルアドセンス」を利用しています。広告配信事業者は、ユーザーの興味に応じた広告を表示するためにCookie(クッキー)を使用することがあります。Cookie(クッキー)を無効にする設定およびGoogleアドセンスに関する詳細は「広告 – ポリシーと規約 – Google」をご覧ください。

また、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによってサイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイトプログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムの参加者です。第三者がコンテンツおよび宣伝を提供し、訪問者から直接情報を収集し、訪問者のブラウザにクッキーを設定したりこれを認識したりする場合があります。

免責事項
当サイトからリンクやバナーなどによって他のサイトに移動された場合、移動先サイトで提供される情報、サービス等について一切の責任を負いません。
当サイトのコンテンツ・情報につきまして、可能な限り正確な情報を掲載するよう努めておりますが、誤情報が入り込んだり、情報が古くなっていることもございます。
当サイトに掲載された内容によって生じた損害等の一切の責任を負いかねますのでご了承ください。

プライバシーポリシーの変更について
当サイトは、個人情報に関して適用される日本の法令を遵守するとともに、本ポリシーの内容を適宜見直しその改善に努めます。
修正された最新のプライバシーポリシーは常に本ページにて開示されます。

 

下りるために登るんさ

 

2018年2月15日

イギリス英語について

 

 

イギリス英語とは?

 

「アメリカ英語」とよく比較される「イギリス英語」


ただ「イギリス英語」と一括りによく言われるが、


いざその中身は、というと意外に複雑。


よくイギリスは「階級社会」とも形容されるように、その階級ごとの違いがあり、さらに、またコックニー (ロンドンの下町で話される英語) 、


イングランド北東部の「Geordieアクセント」などの地域ごとの違い、もありそれらが絡み合っているからである。

さらに、オックスフォード、ケンブリッジ出身者の話す


「オックスブリッジアクセント」


というのもある。

 

一般的なイギリス英語は?


一般に「イギリス英語」というのは、


「容認発音 RP (received pronunciation) 」


を指すことが多い。これは、BBCイングリッシュとも言わ
れ、公的な場で用いられる標準英語を指す。

しかし、これを用いる人は人口の数%とも言われており、

イギリスでは多種多様な英語が飛び交っていることが分かる。

さらに、英語と階級社会という視点でよく例にあげられるのが、マーガレット・サッチャー


マーガレット・サッチャーとイギリス英語

f:id:climbershigh:20180215194734j:plain

Telegraph http://www.telegraph.co.uk/news/politics/margaret-thatcher/8290139/Margaret-Thatcher-held-secret-meetings-with-Indian-mystic.html


中産階級出身の彼女は、イングランド北部の訛りを直すために、

なんと語学学校に通って、RPを習得し、(すごい!)

そしてオックスフォード大学への入学を決める。

この英語の特訓無しに、後に首相になることもなかったろう。

たかが、英語、されど、英語。

その奥深さに、悪戦苦闘する日々…。