勝利をもたらしたのは多様性!? ーワールドカップ閉幕ー
フランスがクロアチアを4-2で破って、98年大会以来、20年ぶりの優勝を決めた。
と同時に、1ヵ月に渡って祭典も終わりを迎える。
Emmanuel Macron dans tous ses états pendant France-Croatie
大健闘の日本代表
さてロシア大会は、日本で観戦している人にとって、なかなか時差がしんどい大会だったろう。しかし、本当に良く戦ってくれたと思う。
まさかのPKから、きっちりと勝ち切ったコロンビア戦。
本田のゴールで引き分けに持ち込んだセネガル戦。
そして、物議を醸した、ポーランド戦でのパス回し…。
2点リードで、ベスト8の夢を見せてくれた、ベルギー戦。
色々とあったが、全体を通して、素晴らしい試合を見せてもらえた。個人的には、やはり本田の活躍は見ていて心が躍るものがあった。
https://russia2018.yahoo.co.jp/column/detail/201806250002-spnavi/
フランスの勝因?
既に指摘されているところではあるが、フランスの躍進には「移民」の力が大きいとされる。19歳のエムバペをはじめ、代表メンバーの多くが、ルーツをフランスの外にもっている。このツイートがそれを物語っている。
France just won the #WorldCup, but so did Cameroon, Angola, Nigeria, the DRC, Mali, and Guinea and Senegal.
— The Undefeated (@TheUndefeated) 2018年7月15日
The Cup may have never before belonged to so much of the world. pic.twitter.com/FfIB2snhUY
それから、ベルギーについてもそれがあてはまるだろう。
メンバーの出生地は23人全員がベルギーだが、ルーツはさまざまだ。半数近くがアフリカなどからの移民の子。人口約1100万人で労働力確保のため移民を多く受け入れており、地元紙によると非欧州連合(EU)移民は12%。1世とその子供が溶け込み、サッカー界でも台頭している。
多様性が両チームの躍進の鍵となったのは間違いないだろう。
感動の1ヵ月間
https://www.footballchannel.jp/2018/07/16/post281714/
冒頭のマクロン大統領とは大違いで…モドリッチに笑顔はなかった。
彼としてはなんとしても優勝したかっただけに無念だったろう。今大会の盛り上がりの最大の要因は、クロアチアの健闘だったろう。
いろいろな波乱もあり、ドラマもあり、感動に沸いた1か月間。
おかげで楽しい時間を過ごせたことを、感謝したい。
さあ、日常に戻りましょう!笑
クロアチア飛躍の影に……ユーゴ紛争とワールドカップ
大躍進のクロアチア。決勝を明日に控えて、注目されているのは、クロアチア代表のキャプテン、モドリッチ。今大会では、ユーゴ紛争に関連する話が話題に。
ユーゴ紛争とは?
1991年から99年あたりにかけて、ユーゴスラビア連邦からの分離独立、および国内での自治政府の対立をめぐっての紛争をさす。
経緯を全て書くことはできないが、もともと1つの国のなかに、多くの民族が共存しており、
「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、そして1つの国家」
という有名な言葉があるくらいである。
そんなバラバラな状態でも、ティトーという偉大な大統領の下で、戦後しばらくはまとまっており、順調な国家運営がなされていた。
しかし、彼の死後、各地で民族主義が台頭し、独立、自治などをめぐって紛争となる。
1991年には、スロベニア、クロアチア、マケドニア、1992年にはボスニア・ヘルツェゴビナが独立宣言を行い、内戦に突入。
ロシアやアメリカ、ヨーロッパなど、周辺国が介入することでさらに複雑に、そして紛争は泥沼化…。
戦火でのモドリッチ
まさにその戦火のクロアチア、誕生したのがモドリッチだったのである。関連してこちらのツイートが話題に。
When he was 6, his granddad was shot dead.
— Rosie on the way (@rosieontheway) 2018年7月11日
His family became refugees, in a warzone.
He grew up to the sound of grenades exploding.
Coaches said he was too weak and too shy to play football.
Today, Luka Modric just led Croatia its first ever #WorldCup final.#CROENG pic.twitter.com/gd4PcWid6O
6歳の時に、祖父が殺され、家族は戦争で難民となり、手りゅう弾の音を聞きながら育ち、コーチはサッカー選手になるには弱すぎると言い、そして、モドリッチはクロアチアをワールドカップの決勝へと導いた。
1985年、モドリッチが生まれたのは旧ユーゴスラビア(現クロアチア)のザダル郊外、モドリッチ村だった。
ユーゴ紛争が始まった1991年、彼の生まれた小さな村はセルビア軍の標的になった。スペインで2012年に放送されたドキュメンタリーによると、当時も生家周辺には、地雷が埋まっていることを示す標識があったという
6歳で難民となったモドリッチは、家族とともにザダルのホテルで暮らした。ホテルの駐車場で、一日中サッカーをして暮らしたモドリッチ少年。
いかにして、彼がクロアチア代表としてプレーをしているかを垣間見ることができる。
コソボとスイス
さらに、もう一つ話題になったのが、セルビアとスイスの予選リーグでのこと。“双頭鷲ポーズ”といわれるこのジェスチャーが物議を醸した。
Kosovo, Albania collect money for fined Swiss players - Elections 2017
スイス代表のなかには、アルバニア系が多くいる。アルバニア系住民もまた、ユーゴ紛争の被害者であり、多くの住民がセルビア軍の攻撃を受けた。そしてそこから多くの人が、スイスに逃れたからである。
この試合でゴールを決めたジャカとシャキリも、アルバニア系で、コソボを支持するアルバニア国旗を意味するジェスチャーをしたものとみられる。
というわけで
紛争からもう20年以上がたったにもかかわらず、ワールドカップを機にうかがえるユーゴ紛争。そんな事情を知っているひとは、「クロアチアを応援したい!」という人も結構みかけます。
はてさて、フランスが意地をみせるか、クロアチアが悲願の初優勝なるか、注目の一戦は15日の深夜24時から。
負けてがっかり…でもほっとしている人が1人だけ!?
本日行われたイングランドとクロアチアの準決勝。試合開始前から、イギリス全土みなテレビに張り付いていました。
Forlorn but proud, fans applaud England despite defeat
大躍進のイングランド
予選リーグを2位通過した後は、コロンビアをPK戦で振り切り、スウェーデンを破っての準決勝進出。なんと28年ぶりということで、イギリスは大盛り上がり。
May Pays Penalty as England World Cup Glory Turns Into Headache - Bloomberg
ワールドカップの日を制定?
労働党のジェレミー・コービンは、なんと
「イングランド代表が優勝したら祝日を作るべきだ」
という宣言までだしたほど。
実現性はともかく、あらゆる垣根を越えて、イギリスが盛り上がっていることを示していよう。ただ、ひとりいまひとつ浮かないのがこのお方。
メイ首相はというと。
ワールドカップの中継を見ている方は、ご存知かと思うが、決勝トーナメントの試合の多くで、参加国の首脳 (大統領、首相、王族など) が観戦にきている。
…がイギリスの政府、王族関係者の姿はいまだ無い…。
本当なら、この機会に自分をアピールしたいと考えるのが政治家の常。
なにより窮地のメイ首相なら、なおさらだろう。
しかし、ソールズベリーでの元ロシア人スパイの毒殺未遂事件を受け、政治家等のW杯への観戦、参加ボイコットを決めたのである。事件の詳細はこちら。
イギリスがここまで勝ち進んだのは予想外で、まさにオウンゴールだという指摘も…。
さすがに決勝に進むことになった場合、ボイコットを続けると国民から批判も受けるし、かといって、今更のこのこ出ていくわけにも…。と追い込まれていただろう。
http://www.cityam.com/252281/leaked-audio-theresa-may-feared-banks-would-leave-uk-after
内心、少しほっとしているのでは。(違ったらすいません…)
ともあれ、イギリス中は悲しみに暮れています…。盛り上がりが大きかっただけに、イギリスが立ち直るのには時間がかかりそうです。
https://www.24matins.uk/topnews/worldcup/forlorn-but-proud-fans-applaud-england-despite-defeat-90121
もう「夢」は終わり………だから「卒業」します!?
さて7月に入り、イギリスは卒業式の季節。ただ思わぬところで「卒業」する方々が!?
デービス、ジョンソン、2人の辞任。
イギリス政局で大きな動き。これまでEU離脱交渉を担当してきたデービスEU離脱担当相、それに続いて、ボリス・ジョンソン外相が相次いで辞任。
メイ首相が提示したEU離脱後もEUとの関係を重視する交渉方針に対して、保守党内の強硬派から反対の声があがっていた。強硬派は、「メイ氏に裏切られた」と反発!
メイ首相の方針とは?
メイ首相は、EUとの関係を密に保つ穏健な案を提示。
ざっくり言えば、離脱後も、EUの規制を維持し、イギリスを経由してEUに向かう輸入品の関税をEUの代わりに徴収する。そして、EUとは自由貿易を続けるという内容。
この案だと、なんのために離脱したのか分からないため、離脱強硬派が怒るのは当然である。そして、わずか1日で、3人もの閣僚が内閣を去るという異常事態になっている。
ジョンソンの辞表
ジョンソン氏は、辞表において、
今の政府案は、不十分なEU離脱であり、EUに従属するものであり、
「不要な自己不信に苦しめられ、ブレキジットの夢は終わろうとしている (dream is dying, suffocated by needless self-doubt)」と述べた。以下に辞表の詳細。
ともあれ、1日で、イギリスの対外関係を司る大臣が2人もやめたわけで、メイ政権の混乱は必至。今後のシナリオとしては、
保守党の分裂? メイ首相の辞任? はたまた解散総選挙?
大変なことになってきた…。
なんともはや……ネット時代の身の安全
ネット界隈でかなりの話題になっている、気の重い事件が…。福岡でのブロガー刺殺事件。
事件の概要
事件の概略は歩いて程度報じられている。
福岡市内であったIT関係セミナーの男性講師を刺殺したとして、福岡県警は25日、福岡市東区筥松(はこまつ)1丁目の無職、松本英光容疑者(42)を殺人と銃刀法違反の疑いで逮捕し、発表した。松本容疑者は「ネット上(のやりとり)で恨んでいた男性を死なせてやろうと思い、腹と首を刺した」などと話しているという。
ネット界隈のリアクション
Hagex氏はそれなりに知られたブロガーで、色々な事象にひたすら噛みつくスタイルで注目を集めていた。そして、今回の加害者ともネット上でトラブルが生じたとされている。
Hagex氏の事件、いまや現代人にとってネットのバーチャルな世界はリアルの世界と同じか、それ以上に大事な空間になっていることを考えれば、この種の事件が起きることは不思議ではない。これからももっと増えるだろう。
— 広瀬隆雄 (@hirosetakao) 2018年6月25日
20数年前、はじめてインターネットに繋がった時、世の中の人はこの回線を通して沢山おしゃべりして、アイディアを交換して、面白いことを考えて、皆の生活は楽しくなると思っていた。パソ通のような世界が広がると思っていた。でも現実は違った
— めいろま「バカ格差 」発売中 (@May_Roma) 2018年6月25日
これまで「インターネットすげえ」は、「ネットの声がリアルに繋がる」ことでみんなが実感してきた。今回のこれも、真相はどうあれ「インターネットすげえ」の延長だ。俺らは警戒しなきゃならない。人を凶行に走らせてしまうインターネットのすごさを。
— しの(スペシャ) (@raf00) 2018年6月24日
他にもありすぎて、引用しきれないほどのリアクションで埋まっている。
うーん
自分も小規模とはいえ、ブログ、SNSで発信しているし、殺害予告的なものこそはないが、嫌がらせコメントが付いたことも当然ある。
研究に関連するのだと、イギリスで、テロに関する公開セミナーで登壇した際も、テーマがテーマなだけに、身の危険が気になったこともあった。
書き物がある程度読まれると、良くも悪くも予想を超えた反応に出会うことがある。組織ジャーナリズムに対するテロの場合、萎縮せず徹頭徹尾暴力を否定する発信を続けていくことが解だろうが、個人にそれができるか。
— 米重 克洋 (@kyoneshige) 2018年6月24日
誰でも簡単に発信できるのがネットの良さ。しかしその裏返しに、リアルの世界で、思わぬ事態を引き起こしかねないという恐ろしさを目の当たりにしている。事件の詳細については捜査の進展を待ちたい。
そして、突然の被害に合われた Hagexさん、心よりご冥福をお祈り申し上げます。
果てしない博士への道のり!?
今日は、イギリスの博士課程と、その過程について、簡単に流れを。
https://www.quora.com/How-do-top-successful-PhD-students-lead-their-lives
イギリスの博士課程
※先に行っておくと、イギリスの博士課程といっても、大学、地域ごとに微妙な違いあり、ここに書いてあることが全て当てはまるとは限りません。その点はご了承ください。
イギリスにおける博士課程は、3年 ~ 4年で、アメリカなどと異なり、コースワーク (いわゆる授業) はほぼなく、ずっと研究に専念することが多い。
ただし、定期的に実施される中間審査にパスすることが求められる。
中間審査
まず、入試における研究計画の審査。研究室に入った後に、研究の進捗度合について、4回の中間審査を受ける。特に1年目の終わりにある中間審査は極めて重要で、これに通ることが実質的な「論文執筆許可」となる。
そして、大学によっては、ここから PhD caididate を名乗ることができるようになる。
この中間審査がほんとにきつい…
中間審査に通れなかった学生は、どうなるの?という疑問はあるかもしれない。
が…………そういう恐ろしい話は長いのでまた今度書きます…。
ともあれ、4つの全ての中間審査に合格すると、「論文提出資格」が与えられる。
そして、模擬審査 (Mock Viva) → 論文提出 → 最終審査 (Viva) という流れになり、最終審査に合格すると晴れて博士号取得となる。
というわけで、入試もある種の事前審査とすると、
イギリスにおいて博士号を取得するためには、7つの審査を越える必要がある。
流れはこんな感じですね。
入試時の審査 →中間審査×4回 → 模擬審査 (Mock Viva)
→ 本審査 (Viva)
博士課程は、自分たちで選んだとはいえ、ほんとうに果てしなく、大変な過程ですね。
ヨーロッパに新たな国が!? (『マケドニア』をめぐって)
世界中が米朝会談に注目する中で、ヨーロッパでも大きなニュースが。マケドニアの新呼称をめぐって。
https://www.bignewsnetwork.com/news/257471011/ending-dispute-with-greece-macedonia-to-rename-country
『マケドニア』をめぐって
マケドニアは、旧ユーゴスラビアの構成国で、独立以後その国名をめぐり、ギリシャとマケドニアは対立を続けていたが、この度名前を変えることで合意した。
そもそも、なぜ対立していたかというと、マケドニアというのはかつて存在していた大国であり、アレクサンダー大王により有名。はい、世界史選択者にはお馴染み? のこちらの方です。
https://www.slideshare.net/christopherdjacobs9/alexanders-arm
で、古マケドニア王国の領域は、現在のマケドニア、ギリシャ、ブルガリアにまたがっていることがあって、
特にギリシャは、「その名称は許さん!」と27年間に渡って、反対していた。茶色が古代マケドニア王国。古代マケドニアは、ギリシャの領土が含まれてますよね。
https://www.bbc.co.uk/news/world-europe-44401643
EUとNATOの加盟をめぐって
その影響は思わぬところに波及。マケドニア共和国は、EUとNATOへの加盟を望んできたが、ギリシャが、この問題によって拒否権を行使してきたため、加盟交渉が開始されずに現在まで至っていた。
しかし、今回マケドニアが、
「北マケドニア共和国」に改名することを表明。
なんとか、事態が前に進む見通しとなった。
たかが、名前、されど名前。2000年以上もはるか前のことだけど、やっぱり歴史をめぐっては皆が熱くなる。
ヨーロッパへお越しの予定があれば、ぜひ、古代ギリシャ、ローマに関する本を読んでおくと、面白さが倍増すること間違いなし!です!