公務員の猫、ラリー。

メイ内閣改造で揺れる中、笑えるネタが一つ。


首相官邸で、「ネズミ捕り」にあたっている、猫のラリーも留任が決定した。

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https://www.thesun.co.uk/news/1811295/larry-the-downing-street-cat-forced-to-live-on-handouts-as-government-doesnt-pay-for-his-vet-bills/

 

ただの猫ではなくて、れっきとした「公務員」であり (給与も支払われている)

Chief Mouser to the Cabinet Office (官邸ネズミ捕獲長) という、肩書もある。

 

ネズミの侵入を防ぐべく (?) 門番をしたりしている。

 

特に、キャメロン首相の家族と仲が良かった。オバマにも謁見してます。

 

ラリーの姿は、この密着取材の動画でも見れます。(登場は 01:12あたり)

 


A Day in the Life of David Cameron


でも、大好きなキャメロンが、去ったあと、


次の首相のメイは、なんと………

 

まさかの………猫ぎらい…………(えっ!!!)

 
というわけで、リストラの噂もあったが…いまでも無事に務めてます。

 

 今日もネズミ捕りに励む、ラリーでした!

大学でのストライキ

 

ここのとこ、大学がやたらと慌ただしい……。

目次

ストライキをめぐって


何かと思えば、イギリス最大の教職員組合 (UCU: University and College Union) が今月からのストライキを宣言しているから。というわけで、今日はストライキのお話を。

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https://www.standard.co.uk/news/transport/tube-strike-piccadilly-and-hammersmith-and-city-line-walkout-suspended-after-talks-a3412851.html


イギリスでは、以前からストライキは起きていたが、ここ数年で増加傾向にある。
その理由は、保守党政権による歳出削減の推進である。


2010年に誕生した、キャメロン政権は、あらゆる分野で歳出を削減し、そのしわ寄せが、給与に響いた面がある。

 

ロンドンでの地下鉄ストライキ


特に大きいのは、昨年に起こった、ロンドンの地下鉄全面ストライキ
24時間のストライキで、影響は数百万人に及んだ…。

 

 

それから、ストライキ恒例の、面白いボードメッセージ。

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https://www.pinterest.co.uk/spoonful16/graffiti-i-like/


要するに、

誰も外出できません。家に帰ってパンでも食べて。


おいおい!!! 笑えない……、でもなんともユニーク。

 

ともあれ、ストライキも日常茶飯事で、慣れました。

 

大学ストライキ

が、今回のUCUの大学ストライキは、4週間規模で驚きの長さ。


UCUは、イギリス全土の教員、職員、それに、TAやRA、試験監督や採点に関わる博士課程の学生らで構成されている。

 

私は関わっていないが、同僚の博士課程には加入しているものも多い。


ストライキの影響として、特に、最終学年の学部生、またイギリスの修士課程は1年であることもあり


この両者は、ぎちぎちに予定が詰まっているため、ストライキの影響はすさまじいものになる可能性も。
 
私のいる Law School にも、既に数名、涙目の学生さんがちらほらと…

 

今後は

交渉は続いているようだが、いまだ打開の糸口は見えていない。

 

このストによって学生の未来に深刻な影響が出かねない。


事情はどうあれ、彼らが犠牲になることは決して許されまい。速やかに両者が歩み寄って事態の収拾に動いてほしい。

イギリスの憲法について

よく、イギリスには「憲法」がない、
と言われる。これは、半分正しく、半分違う。そんなイギリス憲法の話。

目次

 

イギリスに憲法はあるの? 

結論から言うと、イギリスに憲法は「ある」。

 

ただ、ややこしいのは、イギリス憲法は、議会制定法、判例法、など複数に分かれていて、それらの「集合体」であるというところ。


特に有名なのは、13世紀 (!) のマグナカルタ、それから、権利章典

スコットランドとの連合法、最近のものだと、EC (EU) 加盟に関するものも含まれる。


しかし、これらをまとめてホッチキスでとめれば、

「イギリス憲法」になるかといえば、そうではない…。

 

目に見えない「慣習法」


これらに加えて、これまでに積み上げられた文章になっていない (!) 慣習法というものがある。

 

特に、首相の任命や、議会の運営、国王大権など、民主主義の根幹を成す部分の多くは慣習法で成り立っていて、成文化されていない点もある。

 

それまでは、そこそこ、うまくいっていたのだけれど、大きな問題が起きたのが、まさに昨年のEU離脱をめぐってであった。

  

現存するマグナカルタ


ちなみに、マグナカルタの原本は、ロンドンにある大英図書館 (British Library) で一般公開されていて、見ることができる。

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British Library http://blogs.bl.uk/collectioncare/2015/05/public-event-magna-carta-under-the-microscope.html

 

このマグナカルタが、800年の時を経て、なおイギリスの屋台骨を支えているというのは、なんとも感慨深い。

クライマーズハイー名言集ー

小説「クライマーズハイ」の気に入っている言葉を紹介します。

備忘録もかねて。

 

目次

 

 

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

 

小さなことを恐れなさい

小さなことを恐れなさい。
大きなことは、どうにもならない。

 

小さなことを恐れなさい。
大きなことは、どうにかなるの。

 

小さなことを恐れなさい。
小さなうちに、恐れなさい。

 

 

クライマーズハイ

クライマーズハイというものは本当にあるんですか」

「あります。結構、恐ろしいものですよ」

「恐ろしい……?」


 悠木は意外な思いにとらわれた。

「興奮が乗じて恐怖心がマヒしてしまうようなことですよね?」

「ええ、そうです」

「怖さを感じなくなるんでしょう? だったらなぜ恐ろしいんです?」

「解けた時が恐ろしいんです」 末次は眉を寄せて言った。


「ひょんなことで、そのクライマーズハイが解けた時が恐ろしい。心の中に溜め込んだ恐怖心が一気に噴き出しますからね。岩壁を攻めている途中で解けてしまったら、そこからもう一歩も登れなくなります」

 

 

『新聞』と『新聞紙』

俺は『新聞』を作りたいんだ。

『新聞紙』を作るのはもう真っ平だ。

 

忙しさに紛れて見えないだけだ。北関 (新聞社) は死に掛けている。

上の連中の玩具にされて腐りかけているんだ。

 

この投稿を握り潰したら、お前ら一生、『新聞紙』を作り続けることになるぞ。

 

 

おわりに

いかがだったでしょうか。

個人的に気に入っているのが、最後の新聞について。何か物を書いたりする人には、重たく響く言葉ではないでしょうか。

 

どれも、映画には含まれていなかったようなので、興味のある方はぜひ小説を読んでみてください。他にも良い言葉がたくさん詰まっている小説です。

 

ブログのタイトルについて

本ブログのタイトルについて。

 

目次

 

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小説「クライマーズハイ

 

出典は横山秀夫の『クライマーズ・ハイ』から。映画化され話題にもなった作品。

地方の新聞社に勤める記者の悠木を中心として、日航機墜落事件をめぐる人間模様を描いた作品。

もう一人の主役は、悠木に山登りの魅力を教えた同僚の安西。

 

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

クライマーズ・ハイ (文春文庫)

 

 
ある日、悠木は安西に、


「お前は、何のために山に登るのか?」と尋ね、


安西は一言、

「下りるために登るんさ。」 と答え、そのまま立ち去る。

しかし、その真意は謎のまま。

なぜなら、その直後に安西は倒れて意識不明になってしまったから…。


「下りるために登るんさ」


小説を読んでも、この言葉の背景にある安西の真意や、

また作者の意図が明確にわかるわけではない。

ただ、自分なりに考えてみると、

登る と 下りる、っていうのは、反対の意味の言葉として捉えられ、

登るはポジティブ、下りるはネガティブに捉えられることが多い。

でも、実際は、登るだけが人生ではないし、ときに下りることを選択せざるを得ない場面だってある。

むしろ、下りざるを得ない場面で、

きちんと下りることを判断できるか否かってすごく大切なんじゃないかと。

「諦めたら、そこで試合終了!」 とか、

「頑張れば、いつか報われる」とか、

「戦い続ければ道は開ける!」 みたいな言葉があって

結構そういうのを好んで使う人も多いけど


正直、自分はあまり好きじゃない。

やっぱり、置かれてる状況は、人ぞれぞれだし、抱えている苦しみだってそれぞれ違う。

それを一括りにして、片づけようとしている感じがするからだと思う。

実際に、人生においては、どう考えたって、戦い続けるのが難しい場面だってあるし、

方向転換をしたほうがいいときもある。

諦めずに続けた結果が、過労死とか、そこまでいかなくても心身のバランスを崩してしまう、っていうんじゃ元も子ともないでしょ。

実際に、そういう人は山ほどいるんだから。

大切なことは

なので、むしろ大切なのは、自分の人生を、今の状況を、等身大の自分をトータルで受け入れること、

そして、どんなことだって、最後は「下りる」ときがくる。

もっというと、全てはいつか「下りる」ときのためにある。といってもいいんじゃないかと。

自分は、「下りるために登るんさ」をそんな風に解釈してます。

「登る」 と 「下りる」

それは反対語ではなくて、それぞれ等しく価値のある、2つの道、そして可能性なんだと。

そんな思いもあって、ブログのタイトルにしています。

イギリス、アイルランド、そしてEU離脱

 

EU離脱交渉のカギを握る重要な国の一つが

アイルランド

 

目次

 

ユニオニスト」と「ナショナリスト


アイルランドといえば、EU離脱後の、国境問題をめぐって、イギリスとは、まさに、バチバチの関係となっている。

 

両者の対立に奥深いところには、


連合王国」として、北アイルランド、とイングランドの一体性を保ちたいイギリス、そして北アイルランドユニオニストと呼ばれる人たち

 

一方で、悲願であるアイルランド統一を考える人は、アイルランドにはもちろん、北アイルランドナショナリストと呼ばれる人たちがある。

 

 EU離脱と国境問題

EU離脱交渉において注目を集めているのが、「アイルランド国境」をめぐる問題。

アイルランドは、イギリスがEU加盟国との間で、唯一の陸路で国境を接する国とされている。

「っていうか、イギリスとアイルランドの国境って何? 海で隔てられるでしょ?」

と思う方もいるでしょうが、この地図を見ると、アイルランド島が2つに分かれているのがわかること。

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European Car-Transport Group of Interest http://ecgassociation.eu/Activities/ECG-Regional-Meetings/UK-Ireland


そう、この島 (アイルランド島) は、アイルランドと、イギリス領である北アイルランド地方とに分かれているのである。

これが現在EU離脱交渉の最大の論点の一つになっている。

 

国境問題の今後は?

 

現状では、EU加盟国であるアイルランドと、北アイルランド間には、

国境も、税関も無く、自由に行き来できる状態が確保されている。

しかし!!

イギリスがEUを離脱することで、この関係がどうなるかが争点となっていて


アイルランドとしては、イギリスが離脱した後に、国境ができてしまうことは経済的にはもちろん、歴史的経緯からも認められない。

しかし、EUや、イギリスからすると、EU、非EUの国で自由な行き来という取り扱いになることは、制度が複雑になるなど、課題も多い。



これは、難しい問題……。

今は、イギリス、EUが必死に知恵を絞っている。

 

映画「英国王のスピーチ」について

日本でも話題になった英国王のスピーチ(原題:King's speech) とイギリス英語について

 

ジョージ6世の悩み

王室のジョージ6世は、吃音のためうまくスピーチができない。

それを直すために、言語聴覚士ライオネル・ローグが英語の猛特訓するというのが大まかなストーリー。

 

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© 2010 See-Saw Films. All rights reserved.


ジョージ6世は、国王ジョージ5世の次男として生まれ、王位は兄のエドワードが継ぐことになっていた。

実際に、父の死後は、兄が、エドワード8世として即位したものの、


離婚歴のあるアメリカ人女性と結婚を進めようとしたことで、イギリス全土を巻き込む論争となった。


結局、議会と首相はこれに反対し、エドワード8世は退位を余儀なくされる。



俗にいう「王冠を賭けた恋」として知られるこの事件によって、

思わぬ形で、ジョージ6世が即位することになるのである。

この作品ではその点も描かれている。

 

映画における英語表現について

さて、この映画では英語表現についても面白いところが多い。

例えば、ライオネルとジョージ6世の掛け合い。


ジョージ6世が「君は【声なき王】を生み出した!」


そして、少しして、ジョージ6世



「私には伝えたいことがある!!!!!」

といった後に、

自ら、はっ!!( ゚Д゚) とする場面がある。


この吹き替え版の訳は決して間違いではないのだけれども、

これだと、なぜ はっ!!としたのかが、いまいち伝わらない。

英語版のほうでは、 【声なき王】というところは、

 

【voiceless king】

となっており、  【伝えるべきことがある】 という部分は

 「Because I have a 【voice!】 」となっている。


つまり、少し前に、 【voiceless king】 と言いながら、

一転して I have a 【voice! 】


と言っている自分の矛盾に気づいて、はっと!したわけである。


The King's Speech - Official Trailer - The Weinstein Company

このシーンは、 こちらの予告編でも取り上げられている (01:33~あたりから)

 

ちなみに

吹き替え版も非常によくできているが、やはり原文でないと伝わらない部分は多い。


それが、また英語の面白さ、奥深さでもある。


ちなみに、映画にも出てくる、ジョージ6世のかわいい娘2人。


お姉さんのほうは、現女王エリザベス2世である。


沈みつつある大英帝国と、

力を付けるアメリカ、ソ連、そして、

最大の敵となる、ナチスドイツ。

ジョージ6世は、その狭間で懸命に生きた国王なのである。