#Home to Vote!! 憲法改正をめぐって in アイルランド

5月25日、イギリスのお隣、アイルランドで、国民投票が実施されている。

世界的にはEU離脱投票ほどの注目を集めてはいないですが、アイルランドが賛否をめぐって真っ二つになっている。

そのテーマは?

テーマは、人工妊娠中絶の権利をめぐって

カトリックが多数を占めるアイルランドでは、憲法で事実上、中絶を禁止している。

住民投票では、中絶禁止が定められた1983年の憲法修正条項を廃止するかどうかが問われている。

 

現在の規定においては、女性の生命が危険な場合のみ中絶が認められ、性犯罪の被害者や、胎児異常の場合などにおいては認められていない。

そのため、長きに渡って、中絶の権利をめぐって議論が重ねられてきた。

Xcase

特にこの点が取り上げられたのが、1992年に、14歳の少女が、友人の父親にレイプされ、妊娠した事例である。

両親は、中絶が認められている、隣国のイギリスに連れていき手術を実施しようとしたが、当局側が、裁判所の判断を得たうえで、手術を阻止するためアイルランドからの出国を止めてしまった!という事件。

 

この件について、アイルランドのみならず、ヨーロッパ全土を巻き込んで、議論が行われた。被害者が匿名で裁判を行ったため、Xの事件 (X case) と呼ばれている。

 

さて、ダブリンをはじめ各地で賛成派と反対派が議論を展開。こちらは賛成派。

f:id:climbershigh:20180526062430j:plain

Irish Times https://www.irishtimes.com/life-and-style/abroad/illegal-emigrant-voting-how-hometovote-could-backfire-1.3385321

 

一方の、反対派は、

 

f:id:climbershigh:20180526062224j:plain

Irish Times https://www.irishtimes.com/news/crime-and-law/courts/high-court/legal-bid-to-allow-irish-citizens-in-north-to-vote-in-abortion-poll-1.3455869

このように、「人殺しの権利 (Licence to Kill)」という、きつい表現を用いたポスターをあちこちに貼って、反対を呼びかけている。

#HometoVote

さらに注目されるのは、#HometoVote という運動。

これは、在外アイルランド人に向けて、投票のために帰国を呼びかける運動である。

f:id:climbershigh:20180526064223j:plain

https://twitter.com/LdnIrishARC/status/961508568007659520

 

実際に、多くの在外アイルランド人が投票のために帰国をしているようだ。

やや、容認派が優勢とも言われてきた、世論調査であるが、26日の未明には、結果が判明する模様。結果はいかに?

あなたには「従いません」!? (続・ロイヤルウェディング)

ヘンリー王子と、マークルさんとの結婚式、パレードは無事に執り行われた。日本からも中継を見た人も多いと思う。当日の簡単なダイジェスト。

 

f:id:climbershigh:20180520064254j:plain

http://madaboutmeghan.blogspot.co.uk/

出席者は?

出席者は堂々たる面々で、エルトン・ジョンや、ジョージ・クルーニーセリーナ・ウィリアムズ

そしてイギリスを代表する人物であるデービッド・ベッカムも。

その一方で、マークルさんの父親、体調不良で欠席。親族は母親のみのとなった。

 

え?エスコート役はというと?

ピンチヒッターは、なんとヘンリー王子の父親、チャールズ皇太子

f:id:climbershigh:20180520065106j:plain

https://www.eonline.com/photos/24523/prince-harry-and-meghan-markle-s-royal-wedding-day-photos/847973

 

そして、注目されたのは、誓いの言葉。

誓いの言葉で、「従う」を用いず

誓いの場面で、伝統的に用いられてきた

 

夫に「従う」という表現使わなかった点が注目を集めた。

最近では一般のイギリス人の結婚式においても避けられる傾向があり、それを反映したともいえる。

 

そして、式で一番注目だったのは、マイケル司教だったろう。

10分以上の大演説!

マイケル・カリー司教は、およそ13分にも渡って熱弁をふるった。

f:id:climbershigh:20180520070601p:plain

https://www.hulldailymail.co.uk/news/hull-east-yorkshire-news/reverend-michael-curry-royal-wedding-1586826

はっきりいって、従来の王室の結婚式とは全く異なるスタイルで、会場にはとまどいも…。

心なしか、エリザベス女王も不満顔?

ともあれ、「愛の力」について語りつくしておりました。

 

無事に式典も終わり、ヘンリー王子、マークルさんにとっては、これからが正念場となるだろう。

 

 

最後に、マークルさん着用の特注で作られたドレス。

f:id:climbershigh:20180520070943j:plain

https://www.express.co.uk/news/royal/962138/Royal-Wedding-Meghan-Markle-arrives-ceremony-dress-Givenchy

 


大英帝国の屋台骨を支えてきた王室。
若い2人がどのようにその重責を担っていくのか、注目したい。

いよいよロイヤル・ウェディング!

5月19日昼から、イギリス王室のヘンリー王子と、メーガン・マークル氏との結婚式が執り行われる。

CNBC https://www.cnbc.com/2018/05/15/meghan-markles-wedding-dress-may-cost-3-times-an-average-us-salary.html

日程は?

ロイヤルウェディングは、ロンドン郊外にある、ウィンザー城の聖ジョージ礼拝堂。

ウィンザー城は王室の公邸の一つでもあり、有名な観光地ともなっている。

f:id:climbershigh:20180519081941j:plain

https://www.windsor.gov.uk/things-to-do/windsor-castle-p43983

12時に、式が行われて、その後13時から、パレードが行われる予定。多くの人が集まることが予想され、場所とりも白熱?するだろう。

 

パレードを見るためのおすすめの場所に関する記事も数多くでている。

 

新婦のメーガンさんって?

今回の婚約に際して、話題になったのが、メーガンさんのバックグラウンド。

彼女が離婚経験を持つことや、女優をしていた当時のことなど、色々とゴシップのネタにされたいた。

 

そして何より、彼女の父親がアイルランド系オランダ人で、母親がアフリカ系アメリカ人という黒人のハーフ

 

である点が、取り上げられた。

イギリス社会と人種について

イギリスと人種の問題はあまりに根深く、詳しくは別の機会にと思うが、特に王室は極めて保守的とされている。

 

また、エリザベス女王の夫である、エジンバラ公フィリップ殿下が、人種差別主義者というのは広く知られており、色々と憶測を呼んだ。

 

さらに、一部ではメーガン氏を誹謗中傷する声も聞こえ、今回の結婚は、

 

「英王室を汚す」(ひどすぎる…)というコメントがなされ、物議を醸した。

 

ほんとにひどい話ではあるが、今回の結婚を契機に、イギリス社会における人種のありかたについての議論も起こるなど、単なる王室の結婚を越えて、大きな意味を持つものとなる。

そのあたりの議論に興味がある方はこちら。
www.theguardian.com

ともあれ、ほんとうにおめでたい!

色々書いたが、本当におめでたいことには違いない。街は基本的に祝賀ムードで、あちこちの店が結婚関連のイベントやサービスを行っている。

 

当日のタイムラインは、こちら! 私はあいにく行けないので自宅で見ます。苦笑

www.walesonline.co.uk

 

お菓子の持ち込み自由です!? (イギリスの試験事情)

イギリスの大学は5月中旬から6月にかけて、試験期間に突入。

図書館は学生で溢れ、キャンパスの学生もみな忙しそう…。ということで試験について。

f:id:climbershigh:20180517034738j:plain

http://www.dso.manchester.ac.uk/what-support-can-i-get/exams/

イギリスの試験形式

とはいえ、試験そのものは、学部や学科によって大きく異なるのでなんともいえないのだが、

Law School の科目の場合、2時間の間で、4~5くらいの問いの中から、自分で答えたいものを選んで、論述するという形式が多い。

 

特に外国人の場合は、(当然ながら) 全て英語で論述するわけで、なかなか骨が折れる。

f:id:climbershigh:20180517035447p:plain

 

そんな間の癒しとなるのが、なんとお菓子!!

f:id:climbershigh:20180517035719j:plain

https://www.amazon.co.uk/Simply-Sweets-Birthdays-Christmas-everybody/dp/B01GN3F19W

お菓子持ち込み

大学によって、違いはあるものの、私の大学も含め、飲み物、お菓子持ち込み可のところは意外と多い。

 

試験ガイドには、こんな記述が…。

 

6. Take to the exam desk pens, pencils and equipment necessary for completion of the exam only and place this equipment in a clear plastic bag or clear pencil case.  In addition, candidates may take a drink and a small packet of sweets into the exam room.  

 

はい、お菓子 OKです。

 

残念ながら (?) かくいう私は博士課程なので、試験監督をすることはあっても、試験を受けることはないです。

 

気に入ったお菓子を食べながらの試験というのもなかなか楽しそう、

…まあ当事者はそれどころではないけど。

 

イギリスでは試験の成績がその後にとって極めて重要なので、みな必死。

 

f:id:climbershigh:20180517040446p:plain

でも、それが終われば、長い夏休みが待っている!

 

みんな頑張れーと心の底で願っている今日この頃。

 

ちなみに、こちらはシェフィールド大学作成の試験向け動画。イギリスの試験の雰囲気がわかります。

Your Exam- Do’s and Don'ts - Exams - SSiD - The University of Sheffield

緊迫化するパレスチナ情勢

アメリカが、大使館をテルアビブから、エルサレムへと移転したことへの抗議行動が広がり、パレスチナ自治区ガザでは50人以上の死傷者が出る事態となっている。

f:id:climbershigh:20180515071313j:plain
https://edition.cnn.com/2018/05/14/middleeast/gaza-protests-intl/index.html

 全ての当事者は自制を

情勢が急速に悪化している中において、全ての当事者は行動を自制して、沈静化に努めてほしい。

 

もちろん一般論として、イスラエルの治安部隊は、国境、秩序を守るために必要な措置を取る権利がある。ただ、犠牲者の数、またその中に、14歳の子供が含まれていることを考えると、実弾発射は特に慎重に、かつ国際社会の批判にも真摯に耳を傾けてもらいたい。

 

ただし、このような混乱を生み出した最大の原因は、唐突なアメリカによるエルサレムへの大使館移転である。

 大使館移転をめぐって

パレスチナ問題の背景は、とても一度に書ききれるほどではないので、またの機会として、ともかく、パレスチナ和平の最大の論点は、聖地エルサレムの地位についてであった。

f:id:climbershigh:20180515072030j:plain

 

その点についは、これまでの和平合意において、

エルサレムの地位はイスラエルパレスチナの和平交渉で決める」

ということになっていた。

 

それゆえ、これまで、アメリカを含めて各国は、イスラエルが首都としているエルサレムに大使館を置いてこなかった。それだけに、突如としてトランプ政権が実施を表明した今回の移転が、この混乱を引き起こした。

 今後は

これにより、パレスチナ和平交渉は困難になるのみならず、アメリカと近い関係にある、ヨルダン、サウジアラビア、などの中東各国もアメリカの中東政策に厳しい姿勢を向けることになるだろう。

 

そうなれば、中東情勢全体が不安定化し、ことはパレスチナのみならず、世界全体に影響を及ぼす。

 

それにしても…私がパレスチナ (西岸) を訪れたのは、もう3年前だけど出口の見えないどころか、悪化していく現状は、見ていて本当に苦しい。

 

これ以上、事態が悪化しないよう推移を見守りたい。

原稿はここで途絶しているーマルクス生誕から200周年ー

今年の5月5日は、マルクス生誕から200周年ということで、ヨーロッパ各地で様々なイベントが行われている。

 

f:id:climbershigh:20180506223821j:plain

Karl Marx, Capital and the British Library - The British Library

カール・マルクスと『資本論

カール・マルクス、その名を知らない人はいない。

そして、その著書である『資本論』もまた同様であろう。

 

が、これだけ知られつつも、多くの人に最後まで読まれることがない本とも言われる。

全3巻98章の大作であるが、実際のところ、序盤の商品、価値形態のところがなんともややこしく、ここでつまづくと先へ進めない。

f:id:climbershigh:20180506224024p:plain

マルクスとイギリス

ドイツ (当時プロイセン領) に生まれたマルクスは、「危険分子」として、各国政府に追われ、各地を転々とし、最後に行きついたのが、イギリス、ロンドン。

 

様々な文献が集まる大英図書館に籠って、研究に没頭する。

 

朝から図書館に行き、閉館する夜8時まで、ノートをとりつつ文献を読み込み、思索に耽る。そして家に帰ると、そのノートを基に、朝まで勉強を続ける

 

という具合で、ほとんど休まずに仕事を進めた。

 

マルクスの最期

そんな生活のためか、原稿の執筆途中で、彼は倒れて帰らぬ人となった。

部屋に散らかった原稿を、家族とエンゲルスがかき集めて出版されたのが、『資本論』である。

 

最後のページに記されたのは、「原稿はここで途絶している」

 

私はマルクス主義者ではないし、思想的に共鳴する部分はない。しかし、研究者としての姿勢や、特に大英図書館でのエピソードは気に入っている。

 

www.bl.uk

 

大英図書館には、彼に関する展示があり、さらに彼の墓はロンドンの北部のハイゲート墓地にある。興味のある方は、これを機会にマルクス巡りをするのもいいだろう。

 

f:id:climbershigh:20180506224500j:plain

The Atlantic

絶対に負けられない戦いがそこにはある!?

3月4日に、イングランド南部、ソールズベリーで発生した元ロシアスパイのセルゲイ・スクリパリ親子が、意識不明の重体となった件について。

 

ソールズベリーでのテロ事件

 イギリスは早い段階から、2人から極めて毒性の高い神経剤が検出され、ロシアによる神経剤、ノビチョーク(Novichok)の使用があったとして、強く非難した。

 

f:id:climbershigh:20180407222616j:plain

http://abcnews.go.com/International/russia-blame-spys-poisoning-foreign-minister/story?id=53703756

 

ロシア側はその関与を全面的に否定して、他国を巻き込んでの外交戦となっている。

 

その概要については、鶴岡氏の記事が最もよく整理されている。

www.huffingtonpost.jp

 

 国連での戦い、そしてホームズ!?

戦いの舞台は、国連に移され、イギリスとロシアの国連代表による激しいやりとりも。

 

ただ、その中身はウィットに富んでいる。

 

事件の調査団に、ロシア人科学者を入れろとの主張に、イギリス大使は、それは、

 

スコットランドヤード (ロンドン警視庁) に、モリアティー教授を招き入れるようなものだ!」

“Allowing Russian scientists into an investigation where they are the most likely perpetrators of the crime in Salisbury would be like Scotland Yard inviting in Professor Moriarty,” Pierce told reporters earlier on Thursday, citing a character from “Sherlock Holmes.” 

 

f:id:climbershigh:20180407223253j:plain

https://nerdist.com/100-years-of-sherlock-holmes-on-film/

 

思わぬ形で、巻き込まれてしまった、シャーロック。

 

それに、反論して、ロシア大使が、小説「不思議の国のアリス」を掲げて、イギリスの不当性を訴えるなど、激しい戦いながら、少し微笑ましくあるような…。

 

 

もちろん、当事者は真剣。

 

 

とりわけ、イギリスにとっては、単なるテロ事件ではなく、自国内での化学兵器による武力行使である。それゆえ、今回の外交戦には国家の命運がかかる。

 

絶対に負けられない、戦いであろう。