オックスフォード周遊記

普段はイングランド北部で生活しているが、仕事の関係で訪れるのがここオックスフォード。ちょっと見どころを紹介。

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オックスフォードといえば、このラドクリフカメラだろう。

オックスフォード大学の図書館の一部で、いつでもカメラを持った観光客が集まる名所。

 

ぜひ訪れてほしいのは、中心部にあるアシュモレアン博物館 

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https://www.ashmolean.org/plan-your-visit

 

1863年に開館した歴史ある博物館で、建物が美しいだけでなく、古代ローマギリシャの彫刻や、 ラファエロ前派印象派の絵画などもあり、大英博物館にも引けをとらないコレクション。

 

さらに併設されたカフェは、ケーキがおいしいので休憩するのもおすすめ。

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私も次の約束まで時間があるときは、ここで過ごすことが多いです。Wi-Fi完備で机も広く、まったりできます。

 

で、ぜひ特に必須の場所は、「イギリスで一番おいしい」と評判の日本料理店 Edamame。市内中心部から少し歩いて、オックスフォードの中央図書館を抜けた小さな通りの一角にある。

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メニューは、カツカレーから、定食、ラーメンなど一通りあって、値段も 8~10£と、イギリスの日本料理店とすれば良心的な設定と言える。

 

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こちらカツカレー、カレーも、カツも、ごはんも本当においしかったです。

ただ、店が小さいこともあって、お昼時はいつも混んでいるので注意が必要。それと営業時間も日々変わるので、行かれる方はHPをチェックしてください。

 

オックスフォードは、コンパクトな街ながら見どころが多いです。

何より、オックスフォード大学は、現在首相を務めるメイ首相、前首相のキャメロン、外務大臣のボリスジョンソン、財務大臣ハモンド、元首相のブレア、そして、マーガレット・サッチャーなどなど、

 

政治に限らずイギリスの中枢を担う人材を山ほど出している。

まさに、イギリスの基盤を作っている大学街ともいえる。

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オックスフォードの教育や、イギリスにおける位置づけ等については、またの機会に。

ロンドンから電車で1時間。日帰りも可能なので、イギリス観光の折にはぜひコースに入れてはどうでしょう。

 

ピケットラインを越えていけ!?

イギリス全土を揺るがし、世界的にもニュースになりつつある大学でのストライキ、いよいよ2週目に突入、その現状について。

目次

ストライキが2週目に突入

さらに規模が拡大し、各地で大きな影響が出ている。ストライキ開始時の様子はこちら。

climbershigh.hatenablog.co

 

ストライキが開始された、22日、23日は、教員のみならず、学生も参加して、大きな勢いを持っていた。

 

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https://thetab.com/uk/cambridge/2018/02/22/why-i-will-be-crossing-the-picket-line-10761

その一方で、一部の大学では、左派系の学生団体などが、授業や、施設利用の妨害行為など行き過ぎた行動に出た事例も報告された。

 

またあちこちの大学では、労働党の議員がストライキを激励し、それを喜んでtwitterにあげていたりする場面も…。うーん……。

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https://twitter.com/ChiOnwurah/status/968082632335659008


組合側 (UCU) は、ストライキの結束を訴えるものの、次第に学生側や、教員側からも不平や不満は出始めている。

 

学生側から高まる反発も

さらに、学生側からは『授業が休講になるなら、授業料を返してほしい!』

 

という訴えもでている。それも当然といえば、当然だろう。

そして、2週目に入って、少しずつ、授業や研究会を再開する人たちも増えてきた。

 

このことをこちらでは、 cross picket line と表現する。

 

ピケットラインを越えるとは?

ピケットラインとは、大学や教室の前に、スト参加者が並んで、ストライキ中に人の出入りや、スト破りを防止すること。

 

そして、非組合員や、組合員でもストに同意しないものが、大学で活動をすることを、cross picket line (ピケットラインを越える) という。

私の School でも、cross picket lineを通じて、少しずつ「大学の日常」を取り戻そうという動きがでてきた。

 

自分たちの生活のためにストライキをすることは、働くものの権利である。一方で、学生のために授業をしたい、研究を進めたい、と考えるものには、それを行う権利があり、決して妨害されるべきではない。

f:id:climbershigh:20180302072240j:plain(大学のあちこちに貼られたポスター)

 

27日から、第三者の仲介によって、組合側と大学側の交渉が行われている。

そこで折り合わなければ、来週以降もストライキによる混乱が続くことになる。

果たしてすんなりと収まるだろうか。

大雪にも負けず、EUにも負けず、労働党にも負けず!?

イギリスが大荒れの天気。特に北部は大雪で、交通機関にも大きな影響が。

目次

 

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UK weather latest - snow storm sparks travel chaos on the roads - here's the worst-affected

 

EU離脱協定書

さて、そんななかで、EU離脱をめぐって大きな動きが。

 

第1ラウンドの交渉が終わって、第2ラウンドに移ったまでは良かったが、メイ政権の不安定さによって交渉がとまっていた。

 

第1ラウンドの概要についてはこちらを。

climbershigh.hatenablog.com

 

今日になって、しびれを切らしたEU側がついに、EU離脱協定書を発表

『これに従わないなら、交渉は進めない!!』

 

と言わんばかりの強い姿勢を示した。とりわけ懸案となっていた、北アイルランドアイルランドの国境問題については、北アイルランドが事実上、EUの関税同盟に残ることを示唆するものであり、イギリス政府には受け入れがたいものであった。

 

メイ首相の反応

今回の協定書を受けて、メイ首相は、「受け入れません!!」ときっぱり 拒絶した。

また、連立を北アイルランドDUPも同様にEUの姿勢を強く批判。

 

でも、これだと誰もが恐れる、No-Deal Brexit、つまりEUからの大混乱の中での離脱の可能性が…。

 

アイルランドを取り巻く問題については、こちら。

climbershigh.hatenablog.com

 

労働党の動きは

ここにきて、注目を集めるのが最大野党、労働党の動き。

これまで、コービン党首は曖昧な姿勢を示していたが、

 

先日、EUの関税同盟への残留を認める方針を示す。

そのうえで、保守党の中の、親EU派にも協調を呼びかけた。

 

メイ首相のリーダーシップが疑われている中で、さらに保守党内の亀裂は深まっている。そんななか、労働党の介入は思わぬ影響を与えるかもしれない。

 

保守党内の、強硬派と穏健派の対立は収拾がつかなくなり始めている。

 

大雪にも負けず、EUにも負けず、労働党にも負けず…といけるだろうか?

 

 

 

長いトンネルを抜けると「ストライキ」だった!?

ここ数日、出張で離れていて、戻ってみると大学が全面ストライキに突入していた。

目次

 

ストライキの経緯

ストライキの背景については、

climbershigh.hatenablog.com

 

そして、22日から実際にストライキが実施された。

イギリス全土でおよそ、64の大学、そして4万人のスタッフが参加し、授業に大きな影響が出ている。

 

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Newcastle and Durham university strikes begin as bosses face up to possible compensation fight - Chronicle Live

 

ロンドン、マンチェスター、オックスフォードなど各大学のキャンパスあちらこちらで、ストライキに関わる運動も行われている。

 

ストライキの影響

 

私のいる Law school でも、多くの授業が休講となり、また各種イベントや式典も軒並みキャンセルされている。

あるストライキ参加の先生方にメールを送ったところ、このような類の自動返信が届くことも (一部編集)

 

>> I am currently on strike. This industrial action has been called by the University and College Union (UCU) as the Universities UK wish to change the terms of my pension scheme. …I would like to reassure you that I do not want to go on strike, but at this stage I believe I have no other option. 

 

現在、ストライキで返信できません、ストライキ以外に方法がないです…。というもの。

 

私は今回のストライキについて、同情できるところは多々あるものの、賛同できないし参加もしていない。 

ただ、お世話になっている先生や、同僚の中には参加を決めた人もいるし、彼らには彼らの主張もあるのはたしか。参加を迷っている人も多い。

 

しかし、やはり、4週間の全面ストライキは、学生に与える影響が大きすぎる。

 

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Lecturers on strike at Queen's and Ulster universities - BBC News

 

今後の行方は

いまだに、大学側と組合側との溝は埋まっていない。

このままだと、4週間にとどまらず、4月、5月もストライキは続いて、

学生の試験期間と重なる可能性も指摘されている。

 

www.thetimes.co.uk

 

そうなるとイギリスの大学教育が根底から壊れてしまいかねない。

非常に深刻な状況ともいえよう。

公務員の猫、ラリー。

メイ内閣改造で揺れる中、笑えるネタが一つ。


首相官邸で、「ネズミ捕り」にあたっている、猫のラリーも留任が決定した。

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https://www.thesun.co.uk/news/1811295/larry-the-downing-street-cat-forced-to-live-on-handouts-as-government-doesnt-pay-for-his-vet-bills/

 

ただの猫ではなくて、れっきとした「公務員」であり (給与も支払われている)

Chief Mouser to the Cabinet Office (官邸ネズミ捕獲長) という、肩書もある。

 

ネズミの侵入を防ぐべく (?) 門番をしたりしている。

 

特に、キャメロン首相の家族と仲が良かった。オバマにも謁見してます。

 

ラリーの姿は、この密着取材の動画でも見れます。(登場は 01:12あたり)

 


A Day in the Life of David Cameron


でも、大好きなキャメロンが、去ったあと、


次の首相のメイは、なんと………

 

まさかの………猫ぎらい…………(えっ!!!)

 
というわけで、リストラの噂もあったが…いまでも無事に務めてます。

 

 今日もネズミ捕りに励む、ラリーでした!

大学でのストライキ

 

ここのとこ、大学がやたらと慌ただしい……。

目次

ストライキをめぐって


何かと思えば、イギリス最大の教職員組合 (UCU: University and College Union) が今月からのストライキを宣言しているから。というわけで、今日はストライキのお話を。

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https://www.standard.co.uk/news/transport/tube-strike-piccadilly-and-hammersmith-and-city-line-walkout-suspended-after-talks-a3412851.html


イギリスでは、以前からストライキは起きていたが、ここ数年で増加傾向にある。
その理由は、保守党政権による歳出削減の推進である。


2010年に誕生した、キャメロン政権は、あらゆる分野で歳出を削減し、そのしわ寄せが、給与に響いた面がある。

 

ロンドンでの地下鉄ストライキ


特に大きいのは、昨年に起こった、ロンドンの地下鉄全面ストライキ
24時間のストライキで、影響は数百万人に及んだ…。

 

 

それから、ストライキ恒例の、面白いボードメッセージ。

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https://www.pinterest.co.uk/spoonful16/graffiti-i-like/


要するに、

誰も外出できません。家に帰ってパンでも食べて。


おいおい!!! 笑えない……、でもなんともユニーク。

 

ともあれ、ストライキも日常茶飯事で、慣れました。

 

大学ストライキ

が、今回のUCUの大学ストライキは、4週間規模で驚きの長さ。


UCUは、イギリス全土の教員、職員、それに、TAやRA、試験監督や採点に関わる博士課程の学生らで構成されている。

 

私は関わっていないが、同僚の博士課程には加入しているものも多い。


ストライキの影響として、特に、最終学年の学部生、またイギリスの修士課程は1年であることもあり


この両者は、ぎちぎちに予定が詰まっているため、ストライキの影響はすさまじいものになる可能性も。
 
私のいる Law School にも、既に数名、涙目の学生さんがちらほらと…

 

今後は

交渉は続いているようだが、いまだ打開の糸口は見えていない。

 

このストによって学生の未来に深刻な影響が出かねない。


事情はどうあれ、彼らが犠牲になることは決して許されまい。速やかに両者が歩み寄って事態の収拾に動いてほしい。

イギリスの憲法について

よく、イギリスには「憲法」がない、
と言われる。これは、半分正しく、半分違う。そんなイギリス憲法の話。

目次

 

イギリスに憲法はあるの? 

結論から言うと、イギリスに憲法は「ある」。

 

ただ、ややこしいのは、イギリス憲法は、議会制定法、判例法、など複数に分かれていて、それらの「集合体」であるというところ。


特に有名なのは、13世紀 (!) のマグナカルタ、それから、権利章典

スコットランドとの連合法、最近のものだと、EC (EU) 加盟に関するものも含まれる。


しかし、これらをまとめてホッチキスでとめれば、

「イギリス憲法」になるかといえば、そうではない…。

 

目に見えない「慣習法」


これらに加えて、これまでに積み上げられた文章になっていない (!) 慣習法というものがある。

 

特に、首相の任命や、議会の運営、国王大権など、民主主義の根幹を成す部分の多くは慣習法で成り立っていて、成文化されていない点もある。

 

それまでは、そこそこ、うまくいっていたのだけれど、大きな問題が起きたのが、まさに昨年のEU離脱をめぐってであった。

  

現存するマグナカルタ


ちなみに、マグナカルタの原本は、ロンドンにある大英図書館 (British Library) で一般公開されていて、見ることができる。

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British Library http://blogs.bl.uk/collectioncare/2015/05/public-event-magna-carta-under-the-microscope.html

 

このマグナカルタが、800年の時を経て、なおイギリスの屋台骨を支えているというのは、なんとも感慨深い。